「身も蓋もある」Exhibition at Kamakura Nov. 19 - 23

KaoruTakagi × Shiho Minami × Kahori Maki
Nov. 29, 2016


器の中に、鎌倉の「景色」またはあなたの「気色」が存分に表現されました。KAORUは食物を盛りつける為の器ではなく、自身の中身を受けてやる為の器をつくりたい、と言う。それぞれが生み出した鮮やかな景色をもう一度身体におさめた時、思いもよらない方角に、新たな鍵穴を見つけました。

photograph/ Waki Hamatsu
text/ Kiyomi Kuroiwa




京都の若い秋から、北鎌倉の実り秋へ。
「身も蓋もある」で、ひと時を過ごしました。
まるで茶会のような心配りに溢れた3人の女性アーティストたちのおもてなしインスタレーション。北鎌倉の古民家は、茶会のリチュアルになぞらえたような、共に作る体験、共に在る空間で、人の営みや有様を包み込む非日常の「器」でした。
茶会風の体験。

寄り付き

詫びたお庭を眺めてご亭主のご挨拶。
器の宇宙を探求する作家の「鍵」を受け取り席入。
ころっとした群青に金釉の施された愛らしい手がワシの「鍵」。

席入

お軸に模すと、落ち葉の自然造形からのインスピレーションから生まれた美しい和紙の装丁。一人一人の席にそれぞれ違う和紙の作品がのべられてていて、そこにご亭主のメッセージ「景色と気色」と散文が寄せられていました。
板の間には同じ木のインスタレーション。席にはリンゴ箱を作品に変えた座卓サイズの箱が二つ積んであり、蝶番に鍵と呼ばれる魔法の杖を合わせて箱を開けます。この杖はまるで茶席のお扇子のようで、これから始まる非日常の時間を開く区切りのようなものとも感じられます。

いよいよ共空間が始まります。

重なったリンゴ箱を「開き」、大きな器を拝見します。エレガントなトルコブルーの美しい器もあれば、棟方志功のような力強い作品も有りました。白楽のような可憐な器も。ワシの目の前には秋の夕暮れのような深いオレンジと群青のコントラストに金の釉や金箔をまとった華やかな和の色合わせが楽しい器。そこに、蓋となる木材の作品。黄金とも表され、紅葉として愛でられる配色の木の下から秋晴れの空を見上げるとこんな感じかもしれません。
そして粘土シートのようなものを受け取ります。まるで主菓子。自由気ままに素材を扱い形にするのは茶菓子とは違いますが、口に入るのは一緒でした。この素材は生パスタの生地で、呼ばれた方の創作が始まります。無心に食材と向き合いながら、一人一人の個性が写し出されて、実に楽しいひと時。
ご亭主がパスタを茹でている間に、大阪の農家から直接買い付けた野菜たちを大きな器に盛り付けます。再び無心で盛り付けます。
そこにご亭主お手製のソースを自由に加えて、作品が出来上がります。

器や食材に導かれながら、自分のクリエイションをまずはひとたび眺め、他の方のクリエイションを愛で、ここにあるたくさんの「景色」はたまた「気色」を感じながら、最後には実際に味わうという趣向。作品に集中した癒しの時間が流れていきました。
食中茶として嬉しいほうじ茶が運ばれてきて、一服の温かいお茶が、ほっと身体や脳に集まったエネルギーを解きほどいてくれます。
共空間の共体験は、リンゴ箱に器をしまい、蝶番から鍵をかけて、「おしまい」となります。パタンという音が、一つの物語が区切られた合図のように感じられる総合体験でした。 道具としての「器」を新しい視点で感じることができる秋のひと時。
今日は勤労感謝の日。満ちる秋と今日結ばれたご縁にも感謝です。
ありがとうございました。